南イタリア、サレント半島(Penisola Salentina)の西岸、イオニア海(Mar Ionio)に面した町「ガッリーポリ」を訪れていたときのこと。
この町は漁業が盛んで、私が訪れた際も、漁港のあちこちで漁師さんたちが、魚を網から外したり、網を繕ったり、せっせと仕事をしていた。
赤や青の、日本で見るのとはちょっと違ったデザインの魚を見せてもらいながら、これは何という名前の魚ですか? などと、仕事のお邪魔にならない程度に、ちょろちょろと 話を聞いていた。
しばらくして、私の後の、ずっと向こうの方から、「マルコー!(仮名)」と大きな声がした。
振り返ると、50メートルほど離れたところの、高さ10メートルはある壁の上で、女性が一人こちらの様子を伺っている。
ここで、少し説明が必要ですね。
ガッリーポリの町には、本土から突き出た小さな島があり、そこに旧市街がある。(本土側に新市街があります。)
島は、その昔、外敵から町を守るために要塞化され、堅牢な城壁が島を取り囲むように残っており、その高い壁の内側で、今も人々が暮らしている。
私や漁師さんたちがいる港は、その島の城壁の外側、そして、声をかけてきた女性がいるのは、居住地区がある壁の上。
住人の方にとって、家と港を行き来するには、坂を上ったり下ったり、城壁の出口へぐるっと回ったりと、少々の労力と時間が必要となる。
港で仕事をしている場合、居住地区と労働地区の距離が近いわりに、行き来がやや面倒なのだ。
・・・で、話を元に戻します。
後ろから、女性の大きな声がかかった、と同時に、一人の漁師さんが城壁めがけて走り出した。一杯のイカを握りしめて。
途中、コンクリートでできた柵があり、イカを一旦そこに置いて飛び越える。
そして再びイカを手にとり、城壁の下まで駆けつけると、上にいる女性と二言、三言。どうやら上にいるのは、彼の奥さんのようだ。
妻:あんた、お弁当持ってきたよ。
夫:おう。あんがとよ。これ、ご返杯のイカだ。ここに括りつけとくから、パスタにでも入れて 子供たちと一緒に食ってくれや。
妻・夫:Buon appetito‼
・・・といった やり取りがあったかどうかは定かではないが、どうもそんな感じだった。
城壁の上と下。ロープでのお弁当渡し。ご返杯のイカ括り。
上手く言葉では言い表せないが、この夫婦のやり取りが面白く、特別編成ゆるゆる版 ロミオとジュリエットのワンシーンのようで、何だか微笑ましかった。
毎日こんなふうにやってるのかなぁ。。。