<前回からのつづきです>
沐浴施設の隣にある、蝋燭がたくさん並ぶエリアを歩いた。通路の両側に小屋がいくつも並んでいる。
一見すると日本のお祭りなどで見る屋台の並びのようだが、もちろん それは リンゴ飴 や 綿飴 を売ったりするお店でも、金魚すくいなどをする屋台でもなく、全ての小屋が丸ごと「燭台」になっている。
人々が、順々に蝋燭を手向け、祈りを捧げて行く。
蝋燭は、長さ30㎝くらいの白く細長いシンプルなものから、人の背丈ほどある、大きくカラフルなものまである。
大きな蝋燭には 文字が書かれていたり、美しい装飾がされているものもあるので、何らかの願いが込められていたり、何かに捧げる祈りを表しているのだろうが、私には よくわからない。
いろいろな町の教会を訪れたときなど、固形燃料(旅館で鍋を温めるとき等に使うあれです。)みたいな形の小さな蝋燭に火を灯し、薄暗い教会内で祈りを捧げて行く人を見ることはよくあるが、屋外でのこういう光景は、あまり 目にすることが無い。
8月の強い陽射しの下、蝋燭を手向け 祈りを捧げて行く人々の姿は、日本での お盆のお墓参りを 私に思い出させた。
もちろんここはお墓ではないので、祈りを捧げている皆さんは、ご先祖様と会話をしているわけではない。
全くの想像だが、世界の平和や、大切な人の健康、幸せなどを祈っているのだと思う。
蝋燭を手向ける人の心の持ちようは、その信仰や、洋の東西で全く異なるのだろうが、どちらにしても この雰囲気は、人の心を穏やかにしてくれる。
ルルドは普通の小さな町でもある
カトリックの聖地として、年間に500万人を超える人が世界中から訪れると言われるルルドだが、その訪問者の多くは巡礼の方々で、サンクチュアリ(聖域)への訪問を目的にやって来る。
そのため、ルルドの話をしようとすれば、当然サンクチュアリのことがメインになってしまい、特別な場所として紹介してしまいがち。
町の構成にしても、中心はサンクチュアリであり、門前町のように 多くのホテルが周辺に建ち、参道に沿って土産物屋や飲食店が並び、そして住宅街が広がる。
カトリックの聖地として特別視される町だが、住宅街は 他の町と何ら変わらない。
メリー(mairie/役場)があり、教会があり、床屋も 雑貨屋もあり、クリーニング屋も 電気屋も、携帯ショップも 映画館も、そして、もちろんマルシェ(marché/市場)もある。
マルシェがある! と聞くと行きたくなってしまう私は、翌朝さっそく出かけてみた。
時間が早かったのか、お客さんの姿は まだ少ない。
人の好さそうなムッスュに声をかけてみる。「すみません。ちょっと写真を撮らせてもらっていいですか?」
「Bien sûr!(もちろん!)どんどん撮れ。んだけど、別に珍しいもんは売ってないぞ。ガハハ」
「あ、ありがとうございます。。。」
当たり前だが、他の町のマルシェとなんら変わらない。
ルルドは普通の町でもある。