敬虔な信仰心を持ち、祈りのため、病気の治癒のため、摯実な思いを抱き この町を訪れる人が多いと聞く。
そんな カトリックの聖地ルルドへ向かっていた 私の気持ちは、当初「軽い気持ちで訪れてしまってもよいのだろうか・・・」だった。
しかし、街なかや、サンクチュアリ(聖域)内部を歩くにつれ、私の考えは杞憂であることがわかってくる。
もちろん、周りにいるのは 巡礼の方々がほとんどなので、そこここで祈りを捧げている人がたくさんいるのだが、私のような 若干ミーハーな観光客でも、皆さんのお邪魔をしなければ、寺社仏閣を巡るような いつもの感覚でいても問題はない。
特別に畏まる必要もなく、万病を治すと言われている「ルルドの泉」を 口にすることもできるし、サンクチュアリ内部に幾つも存在する聖堂で執り行われている様々な言語でのミサにも、自由に参加したり、見学したりすることができる。
私の訪問中、ある場所ではイタリア語で、ある場所では ちょっと解らない言語で、粛々とミサが行われていた。
また、神父さんがお話しをされる演壇横に、コートジボワールの国旗を掲げ 執り行われているミサがあった。
式辞の途中途中で歌われるのが、これまでよく耳にしてきた優美な曲調の讃美歌ではなく ゴスペルのようで、そのエネルギッシュで爽やかな雰囲気に とても惹きつけられた。
「わぁ、なにか・・・とても、気持ちいい」
しばらく、その空間に居させてもらった。
奇跡を起こすと言われる「ルルドの泉」へ
ロザリオ大聖堂が立つ岩盤の下には洞窟があり、泉が湧いている。
有名な「ルルドの泉」だ。
泉から湧き出る水は、病気治癒の奇跡を起こすとされている。
「泉」と言っても、洞窟の中の 水が湧き出ているところから、直接水を汲んだり 飲んだりすることができるわけではなく、近くの蛇口を利用する。
たくさんの人に行きわたるように、泉の水が そこから出てくるのだ。
蛇口のボタンを押し、両手に水を溜め、その場でゴクゴク飲む人もいれば、水を持ち帰る為に タンクやペットボトルに注ぐ人もいる。
また、お土産にするために、聖母マリアの形をした 小さなボトルに水を入れている人もいる。(マリア様の形のボトルは 大きさも数種類あり、街のお土産物屋さんで売っています。)
小さな子供も、大人も、お年寄りも、そして、身体の不自由な人や 歩行に自信のない人は、ボランティアと思しき方々が曳く人力車のような乗り物に乗って この場所に赴く。
泉の水を口にし、健康な人は健康なままに、病気や怪我を抱える人は 奇跡を・・・、そう願って。
沐浴施設の周囲は また少し異なる雰囲気が
洞窟がある場所から更に奥に進むと、たくさんの蝋燭が並ぶ場所、そしてその先に沐浴施設がある。
沐浴施設の前では、朝からたくさんの人が集まり、静かにその順番を待っている。
並んでいる人たちの中には、目を閉じ、ブツブツと祈りの言葉を呟いている人がいる。
障碍を持った方々も 付き添いの方と一緒に並んでいる。
皆さんそれぞれ表情は穏やかだが、私とは そこにいることに対する気持ちに 大きな違いがある。
それがよくわかる。 沐浴というのが、どういうふうに行われるのか。
また、ここで沐浴をすると、どんな気持ちになるのか。興味はあったが、おそらく長時間待つことになるのと、ルルドに入る前に抱いていた気持ち「軽い気持ちでよいのか?」が、ここで再び頭をよぎり、今回は参加を見送ることにした。
< つづく >