イタリアの真ん中「ウンブリア州」で、最も日本人に知られている町はおそらくペルージャ(Perugia)だろう。
ウンブリア州の州都で比較的大きな町ということもあるが、1998年に、当時、サッカー日本代表の現役選手として活躍していた中田英寿さんの移籍したチームが、セリエAの「ペルージャ」であったことから、サッカーファンを問わず多くの日本人に知れ渡った。
今回、ご紹介するオルヴィエートの町は、そのペルージャから南西におよそ50㎞、ウンブリア州の西の端、ラツィオ州との境にも近い丘の上にある。
ローマからもフィレンツェからも鉄道を使い1~2時間で行くことができるので比較的訪ねやすく、外部から閉ざされたような こじんまりした町は、ローマやフィレンツェの喧噪に疲れた身には、とてもやさしく新鮮に感じる。
オルヴィエートの鉄道駅(Stazione di Orvieto)を出ると、すぐ目の前にケーブルカー(Funicolare)の乗り場がある。
そのケーブルカーを使い、丘の上に上った先がオルヴィエートの町。
古く趣ある石造りの建物が並ぶ通りを歩いて、まず向かいたいのがこの町のドゥオーモ、オルヴィエート大聖堂(Duomo di Orvieto )だ。(冒頭写真参照)
ケーブルカーを降り、駐車場を越え、メインストリートであるカヴール通り(Corso Cavour)に沿って並木道を抜け直進する。
街の真ん中あたりに建つ時計塔、モーロの塔(Torre del Moro Orvieto)がある交差点を左折し、ドゥオーモ通り(Via del Duomo)を更に進む。
すると、土産物屋や飲食店の並ぶ細い通りの隙間から、ドゥオーモの華麗なファサードが徐々に見えてくる。
古く寂れた印象の建物に囲まれながらここまで歩いてきた分、ドゥオーモが持つ荘厳華麗な顔が現れた時、そのインパクトは強い。
よく日本の城などが発掘調査され、当時、この建物は金ぴかだったんです。などと言われることがあるが、金ぴかの建物など、再建された後の「金閣寺」以外見たことなく、「昔、金ぴかだった建物」というのがどうもイメージしづらい。
しかし、オルヴィエートの金ぴかドゥオーモは、13世紀末から建造が始まり、正面外壁の完成が1600年というから、今から約400年以上前に出来上がったもの。
当時の金ぴかの「美」がまぎれもなく、今もそこにあることになる。
実際は「金ぴか」よりも「多彩で精緻」
ドゥオーモの全体的な印象として「金ぴか」と言ってきたが、実際のところ、建物全体が金で覆われているわけではない。
壁画の部分に金色が多く使用されているので、一見そのような印象を受けるのだが、建物の装飾は、大雑把に金を施したものではなく、実に多彩で精緻。(下の写真を参照ください)
ファサード全体の美しさに気持ちがグッと惹きつけられるが、その後、部分や細部に目を移してゆくことで、圧倒されながらも印象がどんどん変わっていく。
それほど広くはないドゥオーモ前広場での、そんな体験が面白い。