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星の形をした城「パルマノーヴァ」

Palmanova/Friuli-Venezia Giulia/ITALIA

随分前のことになるが、ヴェネツィア(Venezia)から スロヴェニア共和国(Slovenija)へ 車で向かおうと考えていた折、どこか途中に面白そうな町はないかなぁ・・・と、地図を眺めていて「パルマノーヴァ」という町が目に留まった。

星の形をしたその形状に驚き、「何だこれ。面白そう。行ってみたい‼」となったのだ。

実はこの時、それから 更に10年ほど前、シチリアにあるグランミケーレという町を訪れたときに、同じように高ぶった気持ちが、町に入って萎えてしまったことなど、すっかり忘れていた。

グランミケーレは、地図上で「雪の結晶」のように見える「正6角形」の町だった。
「面白そう!」と訪ねてはみたが、町なかは 何もかも普通の町で、雪の結晶の形を感じることは無く、「期待外れ」と言うと町の人に悪いが、正直 そんな印象だったのだ。

町の中で唯一6角形を感じられそうな中央広場も工事中のため入れずじまいで・・・。
僕が勝手に何かを求め過ぎていたのが良くなかった。

星の形をした 平城(ひらじろ)のよう

話をパルマノーヴァに戻す。

アウトストラーダ(Autostrada/高速道路)を降り、案内看板に従って、木々や家々が並ぶ それこそ普通の道を北上していると、フッと視界が開けた。一瞬、だだっ広い草原地帯に出たように思うが、そこに「土塁」や「堀」の跡が見てとれる。
日本国内を旅したとき、「昔ここに砦があった」などの案内があり、平地にある小さな城跡なるものを観ることがあるが、規模の違いこそあれ、まさにそれと似たような雰囲気。

「なるほど、こんな感じか~」と、そのまま 真っ直ぐ進んで行くと、今度は先ほどより「大きく高い土塁」と「広く深い堀」が目の前に迫ってくる。

町の入り口にあたる 門が はっきり見える位置まで来ると、先ほど「砦」と例えていたその奥に、更に大きな「城」が控えていたことがわかる。

「城」と言ったが、実際には「要塞都市」である。
門の外に、複数の防衛線が引かれており、それが、ここに至るまで目にした土塁や堀だ。

土塁や堀を辿ってみれば、この場で見る分にはわからないが、おそらく地図で見た 幾重かの「星の形」になるのだろう。

門をくぐると やはり そこは普通の街

町の中心 グランデ広場(Piazza Grande)に置かれた鳥のオブジェ

グランミケーレを訪れた際にも経験したが、町の中は いたって普通の 現代の街並みだった。
チラホラと観光客が訪れているようだし、建物もきれいで 寂びれた感じはない。

それにこの期間は、そこここに 鳥や犬などの カラフルな動物のオブジェが置かれ、何某かのアート・イベントが催されているようだった。町の中心には、正六角形の「グランデ広場(Piazza Grande)」があり、その周りを ドゥオーモや市庁舎、カフェやお店、郵便局などが取り囲んでいる。

町の外郭が9角形なのに、中心にある広場が6角形という 町の造りも面白い。

広場はかなり広く、祭りやイベントの開催場所としては もってこいだろう。
移動遊園地やサーカスなどを招致するにも、事欠かない大きさだ。
ただ、町の入口である「門」が狭いので、大きな機材の運び込みが難しいかもしれないが・・・。

グランデ広場からのびる道の先に、
アクイレイア門(Porta Aquileia)が見える。

グランデ広場からは 道が放射状に 6本伸びており、そのうちの3本が 町の外に出る門へと繋がっている。

南に アクイレイア門(Porta Aquileia)。北西に ウーディネ門(Porta Udine)。そして、北東に チヴィダーレ門(Porta Cividale)と、それぞれの門の名は、その先にある町の名前が付けられている。

これらの門や城壁は、この地における要塞として外敵の侵略を防ぐため、かつてのヴェネツィア共和国によって、15世紀から17世紀にかけて 造られたという。

歴史上、戦争によって この場所が 激しい攻撃にさらされた経緯があるかどうかは知らないが、間口の狭い門の姿と 周辺の土塁や堀の跡を眺めていると、目の前にある 今の風景がとても長閑なだけに、逆に 重く悲惨な「戦い」のイメージが 浮かんでしまう。

何のためか 知らぬ 凄まじい戦闘
敵も 味方もない 勝ちも 負けもない

そこにある 人 一人一人の「死」
知っているだろう
後に 平和が訪れたとしても
彼らにはもう 遅いってことを