フランス北西部にブルターニュと呼ばれる地域圏がある。
その名からも推察できるが、ブリテン諸島(イギリスなど)と歴史上、地政学上深いつながりがある。
ちなみに「グレート・ブリテン」のことをフランスでは「グランド・ブルターニュ」と言う。
フランスの一地域「ブルターニュ」に対して、本来のブリタニアを示す呼び名だ。
フランスの「地域圏」は、いくつかの「県」がまとまって 一つの地域圏を成しており、
ブルターニュ地域圏は4つの県でできている。
最もパリ(Paris)に近く、首府レンヌ(Rennes)が置かれているイル=エ=ヴィレーヌ県(Ille-et-Vilaine)。
エメラルド海岸と称される美しい海岸線を持つ、北部のコート=ダルモール県(Côtes-d’Armor )。
古都ヴァンヌ(Vannes)を中心とした南部のモルビアン県(Morbihan)。
そして最も西側に、ブレストの町がある フィニステール県(Finistère)がある。
この「フィニステール」という名。フィニス=「終わり」を、テール=「大地」を意味する。
つまりこの地は「地の果て」と呼ばれてきたのだ。
地図を見ればよくわかるが、大西洋に突き出た半島の突端に位置し、その先には海しかない。
福井の東尋坊や、伊豆の城ケ崎を思わせるような断崖がある ラ岬(Pointe du Raz)などから、白波の向こうにゆるく弧を描く水平線を眺めていると、長い時間を経て大陸を渡ってきた往時の人々が、そう呼びたくなったのも、なんとなく解る気がしてくる。
県庁所在地は 50㎞ほど南にある カンペール(Quimper)だが、ブレストは フィニステール最大の(最も人口の多い)都市であり、フランス有数の軍港がある町として知られている。
第二次世界大戦で破壊されてしまった町ゆえ
ブレストには現在もフランス軍の軍港があるが、大西洋に突き出た半島突端の湾内に位置することから、古くから海軍の要所とされてきた。
第二次大戦ではドイツがこの地を占領し、そのドイツ占領軍から町を奪還すべく連合軍が大規模な爆撃をしかけるなど、町の主要部分はほぼ破壊されてしまった。
それゆえブレストの街には、パリなどのような様式美を誇る古い建物がほとんど見られない。
一般的にフランスの都市の市庁舎といえば、大変美しく豪華であったり、瀟洒であったりと、思わず見入ってしまう建造物が多いのだが、ブレストの市庁舎は(申し訳ないが)非常に味気ない普通の建物。
市庁舎(下の写真)も 繁華街の建物(冒頭写真)も 戦後復興時に建てられたもので、いわゆる「美」や「景観」を意識して造られたものではないのだろう。
そのため、観光に訪れても、短時間の滞在だけでは、街歩きに魅力を感じる人は少ないかもしれない。