ご存じのとおりイタリアの国土は、その形状からブーツの形になぞらえられることが多い。そのためプーリア州は「イタリアの踵」というふうに言われる。
この踵の辺りはイタリアの最も東側に位置し、イオニア海を挟んでギリシアに近いことから、歴史上その影響を受けてきたという。そのことは、この地域に点在する様々な町の姿を見てもよくわかる。
大きな特徴は、ひしめくように並ぶ建物が漆喰で塗り固められ、町全体が「白い」ということ。
そして その白の無秩序な並びが、美しくもあり面白くもあって、興味をそそる。
チステルニーノはそんな「白い町」の一つ。
有名なアルベロベッロ(Alberobello)から東へ20㎞ほど進んだところに位置する、小さな町だ。
旧市街のビットリオ・エマヌエーレ広場を中心に、町の中は不規則な路地が、広がったり狭まったり、曲がったり行き止まったり、それこそ迷路のようになっている。
とはいっても、それほど広くないので、完全な迷子になることはない。
「あれ? ここどこ?」と一瞬、道に迷って不安を感じたとしても、そのままどちらかへ歩を進めれば、すぐに先ほど通った場所へと出てきてしまう。
安心して「迷子プレイ」が楽しめるのだ。
田舎町だからだろうか、出合った人は皆、何となく温かい。
冒頭の写真のスィニョーレも私に声をかけてくれたのだが、散歩に出ているだけなのに、身なりはキチンとしていて、優しい笑顔の中に、気品が感じられる。
「Salve」
「・・・サルヴェ」
彼は、しばらく掲示板を眺めた後、朝日を浴びながら、ゆっくり去っていった。