前回記事に、「かつてオート=ノルマンディー(Haute-Normandie/高いノルマンディー)と呼ばれていたこの辺りの海岸は、切り立った断崖になっている」と書いたが、文章による説明だけではちょっとわかりにくい。
そこで「こんな感じのコトを言っておりました」とご覧いただきたく、冒頭に写真を掲載した。
写真は、ル・トレポーの港の突端にある灯台へ向かう木製の通路辺りを撮影したもの。
向こう側に白い岩肌の断崖絶壁が見える。
また断崖の左下には、若干だが白波のたつ海も見える。
写っている断崖はメール=レ=バン(Mers-les-Bains)という隣町のものだが、ル・トレポーの町の背後にも同じような崖が切り立っている。
港近くの住宅街の奥にはケーブルカー(Funiculaire)の乗り場もあり、浜辺に近い下の町から、崖の中を通って上の台地まで一気に昇ることができ、この町のちょっとした名所にもなっている。
一帯の海岸線はずっとこんな感じで断崖絶壁が続き、所々に河川が海へと流れ出る低くなった土地がある。その周辺に町ができているといった具合。
ル・トレポーもそんな町の一つ。
セーヌ=マリティーム県(Seine-Maritime)とソンム県(Somme)の県境であり、ノルマンディー地域圏(Normandy※)とオー=ド=フランス地域圏(Hauts-de-France※)の地域圏境にもなっているブレル川の河口に位置している。
また、川は現在2本の運河に整備され、港を通って海へと流れ込んでいる。
※ノルマンディー地域圏は、2015年まで存在した「オート=ノルマンディー地域圏」と「バス=ノルマンディー地域圏(Basse-Normandie)」が統合された地域圏です。
※オー=ド=フランス地域圏は、2015年まで存在した「ノール・パ=ド=カレー地域圏(Nord-Pas-de-Calais)」と「ピカルディ地域圏(Picardie)」が統合された地域圏です。
マリーナには漁船の他、プレジャーボートが並んでいる。
町と港を見下ろすように建つサン・ジャック教会(Église catholique Saint-Jacques du Tréport)がひときわ目を惹く。
どこかからゴーという大きな音が聞こえてくる。
音のする方向へ行ってみると、そこは運河の閘門だった。
干潮のため、運河側から大量の水が流れ出している。なかなかの迫力だ。
訪れたのは真冬。やっぱ、海の町は夏に来るのがイイらしい・・・
この時の旅で私は、フランスの犬の取材もしていて、
いい雰囲気を醸し出している「犬とご主人のコンビ」を見かけると、写真を撮らせてもらったり、話を色々伺ったりしていた。
たまたま時間帯がよかったのか、犬の散歩に出てくる人が多く、わずかな滞在時間に数匹の犬&飼い主さんと出会った。
しかし、この日は特に朝の気温が低く、手足が悴むほど寒かったため、長く足止めするわけにもいかず、ゆっくり話を聞くことがあまりできなかった。
そんな中、写真のムッスュではないが、「次は夏においでよ。ここ(ル・トレポー)も、メール=レ=バン(隣町)も、とってもイイから!」と、寒風をものともせず熱~く語り続ける方もいた。
確かに夏は良さそうだ。
こじんまりしているが賑やかで華やかな海のリゾートになるのが想像できる。
今回の訪問は下見だ。いつか改めて訪れるための 良さげな町を一つ見つけたということで・・・と、とりあえず そう自分に言い聞かせ、元々の目的地サン=ヴァレリー=シュル=ソンム(Saint-Valery-sur-Somme)へ向かうことにした。